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猫二匹と無職が織り成す無為無為な日々

【映画】予告犯【感想】

今日は、映画「予告犯」(2015年6月6日公開)について。

あらすじ

警視庁のネット犯罪の対策部署として設立されたサイバー犯罪対策課。ある日、動画サイトYOURTUBEに、新聞紙を頭に被った男が、某食品加工会社に放火の予告をしている動画が発見される。その後も幾度となく犯罪予告を繰り返す男。警視庁はこの男を“新聞男”と名付ける。サイバー犯罪対策課は新聞男は複数犯であると睨み、新聞男らの正体や動機を探るべく本腰を入れて調査を始めるようになる。

予告犯 - Wikipedia 

 

この映画が、世間的にどういう評価を得ているのか私にはわからない。

有名俳優が出演しているけれど、内容の過激さや、如何にも模倣犯を呼びそうにも思える内容からして、一般受けはしないような気もしている。恋愛要素は一粒ほどしかないし。

けれど、この映画は、私にとって忘れられない作品となった。

切なく、美しく、苦しく、眩しい、そんな映画だったように思う。

 

続きからはがっつりとネタバレするので、ご注意を。

まず、主人公の、生田斗真演じる「ゲイツ」。

彼が元SEであり、そして職場で胃潰瘍になって血を吐くまで苛め抜かれるシーンが、
いきなり私の心臓を傷めつけた。

責任感が強く、真面目で、一番まともであったが故にスケープゴートにされた彼。

本来の仕事を与えてもらえず、掃除でもしてろと嘲られ、周囲からも無視されるその惨めさを、生田斗真は、目を逸らしたくなるほど忠実に演じて見せた。
おそろしいほど、真に迫った演技だった。

そうして身体を壊し働けなくなった彼を待つのは、
「病気退職したとなると、雇ってくれる会社なんてありませんよ」と
職業案内所からも冷たくあしらわれる現実。

実際、IT業界は常に死ぬほど人不足なので、過去に病気退職していようが何だろうが
余裕で雇ってもらえるのだけども、この映画の中ではとにかくそうであるらしい。

そうしてとうとう食うに困るところまで追い詰められたゲイツが、
鈴木亮平演じる「カンサイ」に声をかけられ、俗にいう「タコ部屋」へ。

そこで出会った濱田岳演じる「ノビタ」、荒川良々演じる「メタボ」、
福山康平演じる「ヒョロ」と、彼らは仄かな友情を築いていく。

そのシーンがまた、切なく、美しい。

すぐに沈んでしまう夕日のように、長く続かないことがわかっている切なさと、
だからこその刹那的な美しさ。

ヒョロの死を契機としてゲイツ達は「シンブンシ」として犯罪を積み重ねていくのだけど、そちらは酷薄で過激なダークヒーローという印象なので、
作中のコントラストが物凄い。

タイトルやポスター、キャッチコピーなどを最初に見ると、ただのダークヒーローものだと勘違いしてしまいそうになるのだけど、見てみると、これは驚かされる。

だけど、その驚きは決して不快ではなくて、
寧ろ最後には眩しくて、切なくて、胸に残り続ける驚きなのだ。

この映画は、まず脚本がすごい。演出がすごい。キャスティングがすごい。役者陣の演技がすごい。

ゲイツ生田斗真でなければ、カンサイは鈴木亮平でなければ、ノビタは濱田岳でなければ、メタボは荒川良々でなければ、そしてヒョロは福山康平でなければ、決してこの「予告犯」は完成しなかった。この胸に残り続ける痛みは存在しなかった。

この映画「予告犯」は、本当にすばらしい作品だった。

 

ぜひ、観てほしい。ただし、胸が痛くなるのは覚悟のうえで。